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『週刊がん もっといい日』編集部(株式会社日本医療情報出版)
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週刊がん もっといい日
2010年Vol.231
11月26日更新


Vol.231の目次 『週刊がん もっといい日』編集部 山本武道からのメッセージ

@クローズ・アップ
朝日新聞の東大医科研病院の中傷報道について (下)
〜医科研病院の臨床医として〜
東京大学医科学研究所附属病院 外科 釣田義一郎
(2010年11月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会発行 http://medg.jp)


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10年11月19日更新内容 全記事はこちら

気軽に相談に応じてくれる新資格者の「登録販売者」

 私事で恐縮ですが、不覚にもかぜを引きました。ここ数年、鼻かぜさえ引くことはなく、今年も何事もなく過ごせると思っていた矢先、11月21日の午後、突然ノドが痛み、寒気がしました。このところ朝夕、気温が下がり、寒い日が続いていましたから、もしや・・・と思い、これ以上ひどくならないよう近くの店でかぜ薬とトローチ、うがい薬を購入するため相談しました。
 こちらの症状を聞き、いろいろと説明してかぜ薬を選んでくれたスタッフの白衣の胸に『登録販売者』と記されたネームプレートを見つけました。応対に出たのは薬剤師ではなく、先の薬事法改正によって新しく誕生した登録販売者だったのです。
 46年ぶりに薬事法が改正され、薬局で購入できる医薬品は薬剤師専売薬(スイッチOTC)の1類、薬剤師と登録販売者が取り扱える2類と3類に分類されましたが、相談した薬局には薬剤師が不在なので、当然のこと、1類医薬品を購入することはできません。
 登録販売者は、もともと薬剤師不足をカバーするため新しく誕生した資格者です。すでに全国に10万人近くの登録販売者が、薬局やドラッグストアだけでなく、コンビニエンス、スーパーマーケットといったの店舗に登場。地域住民の健康コンサルタントとして活躍中です。
 登録販売者は、都道府県が実施する試験の合格者に与えられる資格者ですが、症状に応じて医薬品を選択してくれますので、もし「体の調子がおかしい」と感じたならば、近くの薬局やドラッグストア、コンビニエンスストアで登録販売者に相談しましょう。
 ところで私のかぜですが、昨日(11月25日)は体調が優れずに丸一日、自宅で寝ていたことで、本日は皆様に『週刊がん もっといい日』を更新することができました。適切な薬剤を選んでくださった登録販売者に感謝・・・です。
 さて今週もまた、皆様にとって「もっといい日」でありますように・・・。


『週刊がん もっといい日』編集部 山本武道

☆☆☆「週刊がん もっといい日」VOL.231☆☆☆


クローズアップ

朝日新聞の東大医科研病院の中傷報道について (下)
〜医科研病院の臨床医として〜

東京大学医科学研究所附属病院 外科
釣田義一郎

ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程を経て、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。05年から08年までコロンビア大学メイルマン公衆衛生校アソシエイト。08年9月より現職。主著に『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会、オンデマンド版)、『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)。

(2010年11月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会発行 http://medg.jp

【隠ぺいなんかしていません】

 当院で6臓器12プロトコールの臨床試験が行われていたとき、毎週一回、臨床試験を施行中のすべての症例について、症例検討会が行われていました。この検討会は担当医師や治験コーディネーターや薬剤師も参加し、職員は誰もが参加自由でした。
 
 本出血事例もこの検討会で報告検討され、その結果、膵癌の進行による消化管出血という共通認識の上で、重篤な有害事象として扱うこと、消化管出血を起こした場合、(本事例のように)ペプチドワクチン投与が中断(臨床試験中止)となってしまうため(いわゆるdrop out症例を少なくするという目的で)プロトコールを変更することが決定されました。
 
 またこの、6臓器12プロトコールの臨床試験は、2009年5月に終了となったのですが、まだ臨床検体一部の免疫学的解析が終了していなかったにも関わらず、今回の臨床試験のあり方に疑問を持っていらっしゃった先生方の提案で、本臨床試験のレビューをするためのTRカンファランスが2009年7月16日に行われました。
 
 このカンファランスでは、試験責任者それぞれが12プロトコールすべてをレビューしました。今回報道された症例ももちろん報告されました。このカンファランスの開催は医科研病院に事前に連絡され、参加は自由でした。また先述したように本症例は病理解剖を行っていますので、2010年2月19日に病院内でClinicopathological カンファランス(CPC)が開かれました。このカンファランスの開催も2週間前から開催が病院内に通知され参加は自由でした。

 このように、本症例は、症例検討会、TRカンファランス、CPCと病院内でオープンな形式で何回も議論されました。私はそのすべての会に出席いたしましたが、この消化管出血の事象を、今回使用したペプチドと同じペプチドを使用しうる他の施設に報告した方が良いのではという意見は、一度も誰からも出ませんでした。
 私個人は本臨床試験が当院の単施設研究であることを十分理解していましたし、また今回おこった消化管出血が膵癌の進行によるものであることは臨床的に明らかと考えていたので、他施設に報告するという発想すらありませんでした。おそらく他の大半の先生方もそうだったと思います。

 したがって、われわれには今回の報道のように、出血事例を隠ぺいしようとしたという意志もありませんし、その事実もありません。


【悪意に満ちた言いがかり的内部告発の賜物】

 今回の報道は、消化管出血を起こした患者の家人のコメントが全くありませんし、治療経過中の本人や家人と主治医との関係は先述したように良好でした。したがって、情報元は患者の家人ではなく医科研病院の内部の人と思われます。つまり今回の報道は内部告発に端を発したと私は推測しています。私は内部告発を否定しません。
 これまで報道された事件の中でも、実際に患者に対してひどい医療行為をしている医師は残念ながら存在しますし、研究において不正行為をしている人もいます。そういった人に対して、立場上その行為を止められない場合や忠告してもやめてくれない場合、最終手段としての内部告発はある意味、やむをえないと考えています。患者の命の方が大切だからです。実際、医療現場に限らず、食品偽装問題なども内部告発から真実が明らかになりました。

 しかし、今回の消化管出血の事例を他施設に報告すべきだという意見は、本症例について議論する場で一度も出ませんでした。もし一回でも出ていれば、検討し、義務はないが一応報告しておこうという結論になったと思います。
 最近の医療現場では、報告するべきか、しないべきかという議論になった場合には、情報開示の原則に従い、報告するのが常識ですから。そうすれば今回のような報道はなかったわけです(報告が○○か月遅れたという記事になったかもしれませんが・・・)。

 例えば2009年7月のTRカンファランスでそういう意見が出ていれば、1年近く早く他の施設の試験担当医師や患者様に報告できたわけです。しかし、この内部告発者は今まで行われた公開の検討会すべてでその意見を述べませんでした。
 先述したように、私は、今回の消化管出血事例を他の施設に報告しても、臨床試験のそれぞれのプロトコールの文面が一部変更になるだけで、その臨床試験自体は全く変わらなかったと考えています。しかし、2010年2月から朝日新聞記者による当院への質問が開始されているとのことですので、この内部告発者は少なくともその前には他施設に報告すべきであるという意見を持っていたことになります。新聞報道の1年近く前にです。
 したがって、この内部告発者は、他施設へ報告するよりもまず新聞社に内部告発することを選んだわけです。この内部告発は患者のために行ったことといえるでしょうか。間違いなくそんなことは微塵も考えていなかったでしょう。故意に、検討会で意見を言わなかったわけですから。

 したがって、今回の内部告発は、医科研の中村祐輔教授および今回の臨床試験に携わった医科研病院職員対する、ただの中傷です。そこに臨床試験の在り方に対する問題提起という高尚な発想は全くありません。しかも、患者の安全を無視したという点から、非常に悪質な中傷と考えるべきです。今回の報道は、こういった悪意の具現以外何物でもありません。

【結局のところ】
 以上まとめると、今回の朝日新聞の報道は、さほど重要でもない事例を取り上げ、医科研で真摯に臨床研究を行っている研究者や臨床医を中傷することのみを目的とした極めて悪質な報道です。医科研病院内に、このような悪質な内部告発を行った職員がいることは残念でなりませんが、こんな告発を記事にした新聞社はもっと問題です。そこに正義があると主張しているわけですから。


【アカデミアの医師として】

 私は大学を卒業して、すぐに外科医となりました。数年間外部の臨床病院に在籍しましたが主に大学病院で臨床に携わってまいりました。一般の会社に勤めたことはありませんが、一般の会社でも、ドラマでやっているような派閥争いや権力闘争はあるでしょう。大学病院も同じようなものはあります。
 しかし、先端医療を行う使命があるわれわれアカデミアに所属する医師は、こういう権力闘争のなかであっても絶対にやってはいけないことが2つあります。

 一つは、患者の治療に支障をきたしたり、患者の命を道具として使ってはいけないということです。今回の事例も、内部告発者が患者第一に考えていれば、検討会で他施設に連絡するよう進言していたはずです。今回の報道により、全国にいるペプチド療法を施行中の患者の方々がいかに動揺されたか。実際に臨床試験を中断した施設の患者の方はどれだけ落胆されたか。十分予想できたはずです。
 本報道によって癌患者がどのように考えるのかを、朝日新聞記者がもう少し思いやってくだされば、今回の報道はなかったと思います。

 二つ目は、医学の進歩を妨げてはいけないということです。研究者や臨床医の間のライバル関係というのは存在しますし、それによりお互いに切磋琢磨し医学は進歩するのです。中村祐輔先生や今回の臨床試験をライバル視するのなら、もっとすぐれた臨床試験を行えばよいのです。今回の報道のような中傷は、足を引っ張っているだけで医学の進歩を妨げているだけです。

 朝日新聞は今回こういった悪事に加担いたしました。患者会や学会、法律家や名うての臨床医がこぞって今回の報道を攻撃しています。朝日新聞を擁護する医師は福島雅典先生以外に、そんなにいるとは思えません。無駄な抵抗はやめて自らのミスを認め謝った方が得策です。悪いことをしたら謝れと親から習ったでしょう。


【臨床試験の在り方】

 癌の専門家と名乗るのであれば、それが基礎医学者であろうと、社会学者であろうと、臨床医であろうと、癌の発症を予防することにより癌で苦しむ人を一人でも減らすことを目的とし、癌を発症してしまった方に対してはその癌を治癒させることを目的とし、治癒させることができない場合は、少しでも元気で長生きできるようすることを目的として、研究や臨床に努めるべきです。
 そして、有効な治療法の開発には、臨床試験をどんどんやってその治療法の安全性と有効性の検証が必要不可欠です。有効と判断されない薬(化合物?)はさっさと臨床の場から退場していただくべきなのです。実際には薬でもなんでもないものが、だらだらと人体に投与される、あるいは癌患者のあたかも最後の希望の星であるかのように奉られている、これらこそが異常であり、癌患者にとって最大の不幸なのです。したがって、少なくとも臨床試験までたどり着いたモノについては、速やかにその安全性と有効性を検証しなければなりません。

 朝日新聞の11月10日のオピニオン欄で、福島雅典先生は現在の臨床試験について問題があると述べていらっしゃいました。私は臨床外科医ですので、現在の臨床試験のどういうところが問題なのかはよくわかりません。ただ、臨床試験を行う必要性だけは、日々の癌臨床において十分理解しております。
 今回の朝日新聞の報道によって、癌ぺプチドワクチンは大分有名になりました。私が現在勤めている医科研病院は、臨床試験(TR)を行うことを社会的使命としている病院ですから、少なくとも医科研に在職している間は、コーディネーターや臨床試験に詳しい先生方の協力得て、積極的にペプチドワクチンの臨床試験を行いたいと思います。
 災い転じて福となすです。闘志が湧いてまいりました。日々の忙しい臨床の合間に、新しい臨床試験の立案、実施を今後行いたいと思います。

 臨床試験のシステムについては、申し訳ございませんが福島先生や他の専門の先生方にお任せいたします。先生方の決定通りに対応致します。ただ何分重要なこと(らしい)ですので早くやってください。癌患者の生命は無限ではありません。朝日新聞の取材を受ける時間的余裕がお有りなのですから。

 余談ですが、朝日新聞の記事には医科研病院を医科研付属病院と記されています。正式には医科研附属病院です。攻撃対象の正式名称ぐらい間違えないでください。重箱の隅をつつかせていただきました。


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