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〜ミャンマーの子どもたちが小さな傷から命をおとすことのないように〜

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『週刊がん もっといい日』編集部(株式会社日本医療情報出版)
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週刊がん もっといい日
2012年Vol.285
1月26日更新


Vol.285の目次 『週刊がん もっといい日』編集部 山本武道からのメッセージ
●クローズ・アップ
解決志向の被災地支援
相馬フォロアーチーム 吉田 克彦
(2012年1月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会発行 http://medg.jp)


●セミナー・イベントのお知らせ

12年1月19日更新内容 全記事はこちら

膵神経内分泌腫瘍に罹患し分子標的治療薬の治験に参加した患者さんの話

 1月24日に開催されたセミナーに、膵神経内分泌腫瘍に罹患し分子標的治療薬の治験に参加した患者さんが登場。症状が発生した際の状況、医師から「がん」と宣告されたときの不安感、治療の過程などについて話しました。
 「2005年3月、左腰の一部が痛みはじめ、8月になると、仰向けが出来なくなり整形外科や整体に通ったものの、痛みは良くなったり悪くなったりの状態が1年間続きました。その後、痛みがひどくなり、2006年8月には階段の上り下りが出来なくなり、家事も出来なくなり生活にきたすようになりました。この間、血液検査を受けましたが何も異常なしとのことでしたが・・・」
 しかし痛みは、その後も続いたために整形外科でMRI検査を受けて「外科的要素が原因ではない」として内科を紹介され、当の内科医から総合病院を紹介されました。同病院で組織検査をして初めて「すい臓がん」と宣告され、同時に骨転移、リンパ節などに転移し手術不能とされ抗がん剤治療を始めたのでした。
 そして、この患者さんが診断された病名は「膵神経内分泌腫瘍」。聞きなれない病名ですが、昨年10月、米アップル社会長のスティーブ・ジョブさん同じ病名に罹患していたことが分かり世界中に知られることになりました。
 セミナーで、患者さんは第三層の治験に参加する機会を得て、今日まで継続しているそうですが、当初は、「未承認薬であること」や「副作用」のことで不安に感じていたそうです。しかし治験に参加するにあたって、副作用が予測できること、なにか疑問があれば即専門医が理解するまでサポートすることを聞き不安感は一掃。これまで服用を続けてきた過程で副作用が生じましたが、専門医のアドバイスもあって安心して治験を継続することが出来たことを患者さんは話していました。
 診療を受ける患者さんと家族誰しもが、医師が話す一言一言が闘病生活をするための糧になります。本欄で何度も何度も紹介させていただきました私の母も、そうでした。どんなに具合が悪くても、信頼する医師の診察を受けると、青い顔がピンク色に変わっていました。背中を丸めていた母親が、診療後、人が変わったように背筋がきちんと伸び、笑顔で診察室から出てくる光景を何度も見ました。
 セミナーで自己の体験を話された患者さんも、治験を始める前の不安感を一掃したのが、「疑問があれば理解するまで説明してくれる医師」がいたからでしょう。
昨年は「絆」の重要性が叫ばれましたが、医師とメディカルスタッッフ、患者と家族との絆は、これからも固く結ばれ、多くの患者さんが希望をもち、病に打ち勝つことを願っています。

 さて今週もまた、皆様にとって「もっといい日」でありますように・・・。

『週刊がん もっといい日』編集部 山本武道





☆☆☆「週刊がん もっといい日」VOL.285☆☆☆


クローズ・アップ

解決志向の被災地支援

相馬フォロアーチーム 吉田 克彦

(2012年1月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会発行 http://medg.jp

はじめに
 筆者は3.11の東日本大震災を機に、故郷である福島県内で復興支援を行いたいと思い、昨年6月から星槎グループ世界こども財団の支援を得て、相馬市で被災者への心理社会支援を行っている。本稿では、筆者の専門とする社会構成主義的アプローチから被災地支援を考えていきたい。
 筆者の支援において、一つの大きな目標がある。それは数十年後に“「震災と原発事故のせいで人生が台無しになった」ではなく、「震災と原発事故があったけれど、ここまで自分なりに何とかやってきた」というナラティブを作る”ことだ。この目標を実現するためには、次の3つが重要だと考えている。
一つ目は、「原因探し(つくり)」ではなく「解決探し(つくり)」を行うこと。二つ目は、各自の力やリソースを生かすこと。三つ目は支援者が新たな問題を作り出さないこと、である。
 心理的危機介入におけるバイブルともいえるサイコロジカル・ファースト・エイド(PFA)では、援助者が行うことは「被災者に直接役に立つ情報の提供」「現実的な問題の解決」「日常生活を取り戻すための支援」などであり、「被災者全てがトラウマを抱えている」などと援助者が勝手に決めつけて行動することを厳に戒めている。
 一つ事例を紹介しよう。なお、事例は許可を頂いた上でアレンジしてある。

震災の影響が疑われたパニック事例
 小学生の子どもの母親からの相談である。子どものパニック(かんしゃくと夜驚)がひどいという。母親は「余震が怖いのではないか、放射線への不安もあるかもしれない」とのこと。そして、それらの行動が始まると母親は子どもに寄り添い、背中をさすり、落ち着くまでそばにいるという。
 さらに丁寧に聞き取りを続ける。すると大人がいない場面(例えば、登下校中・トイレ・留守番時)にはパニックになっていないことも分かった。その上で「お母さん、お子さんが『そろそろパニックになりそうだ』という予兆はわかりますか」と聞いたところ。母親は首をひねり「わかりません」と答えた。
 そこで、「一週間後の面接までにパニックになりそうな予兆を確かめること」そして、「お母さんが背中をさすることでどれだけパニックの時間が短くなるか知りたいので、パニックになっても背中をさすらないで見守る場面を一度作ってほしい。そばにいると何かしたくなると思うので、隣の部屋に移動してもよい」と依頼した。
 翌週の面談、母親は「パニックになる予兆はわかった。そこで、その予兆が出た時に背中をさすらないように私が別な部屋に移動したら、娘が落ち着きました。それ以来、予兆が出たら部屋を離れるようにしています」とのこと。母親の機転のきいた対応に驚き、今後も続けるように助言をした。
 その上で「パニックにならなかった日は寝る前にいつも以上にスキンシップをしてあげてください」と伝えた。その後も面接を続けているが新たな問題はなく、母子ともに元気に生活している。震災や原発に帰属するような発言はない。

問題探求ではなく解決構築
 この事例は、ブリーフセラピーや認知行動療法(CBT)的な面接である。原因を探るよりも、問題が維持され続けている相互作用に焦点を当て、早期に解決した。
 PFAにあるように現実的な問題の解決のために直接役立つ情報を提供(助言)した。支援する側としては、「余震が怖いのではないか、放射線への不安もかもしれない」という母親の言葉を重視しがちである。しかし、今、この母子が困っていることは「子どものパニック」なのである。パニックを解消しても不安が続くなら、そこで初めて不安について扱う支援をすればいい。不安ばかりに注目して月日が経ってもパニックが続いていたのでは本末転倒だ。

 この事例から、もう一つわかることがある。それは、「現在困っていること(問題)」の有無によって原因が構成されていき、問題を解消することにより原因もなくなることもあるということだ。このような現象はよくある。
 例えば、ひとり親家庭で貧しい幼少期を過ごした子どもがいたとしよう。もしその子が立身出世すれば、ひとり親家庭の貧しい幼少期のエピソードは美談となるし、非行に走れば悪の道に入る要因ととらえられうる。原因が結果を生むのではなく、結果が原因を作り出すのだ。出来事は事後的に意味づけられていく。
 そう考えれば、「今は元気にしているけれど、心の傷は癒えていないはずだから、必ず問題が起きる」と影の部分ばかり注目するのではなく「大変な中でも、ここまではそれなりに乗り越えてきている」と光の部分に注目することが大切だ。

心理社会的支援で重要なこと
 被災地支援に限らず、心理社会的支援では「原因を探す(つくる)」のではなく「解決を探す(つくる)」ことが重要である。それは、いま出来ていることやこれから出来ることを明確化することでもある。
 その結果、本人や家族の可能性を広げ、自尊心やモチベーションの維持向上にもつながる。(老若男女問わず)相談者は弱者ではなく、力強く生きる一人の立派な人間なのだ。専門家に依存させるのではなく、自律(自立)の支援を心掛けていきたい。

略歴:吉田 克彦(よしだかつひこ)
学校法人国際学園東日本大震災対策プロジェクト東北地区担当。相馬フォロアーチームスクールカウンセラー。
1977年福島県いわき市生まれ。10年ほど神奈川県内で学校臨床を中心に活動し、その傍らNPOにて不登校引きこもりに関する家族支援を行う。東日本大震災を機に、故郷福島県内での被災者支援に従事することを希望し、昨年6月から相馬市フォロアーチームで活動を開始。現在は、相馬市内の小中学校での学校臨床を中心に活動。<著書>小学校スクールカウンセリング入門(編著、2008、金子書房)、ブリーフセラピー講義(共著、2011、金剛出版)等多数。





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