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『週刊がん もっといい日』編集部(株式会社日本医療情報出版)
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FAX.03-5688-7803




週刊がん もっといい日
2012年Vol.287
2月9日更新


Vol.287の目次 『週刊がん もっといい日』編集部 山本武道からのメッセージ
●治療最前線
膵がんの術前化学療法で手術の適応範囲を拡大し
出血量の少ない手術で治療成績向上をめざす――
東京医科大学病院(東京都新宿区)消化器外科講師 永川裕一医師


●クローズ・アップ
「高額療養費制度見直し」の議論を振り返って−医療費負担に平等を求めてはいけないのでしょうか
東京大学医科学研究所 特任研究員・看護師 児玉有子
(2012年2月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会発行 http://medg.jp)


●クローズアップ
「放射線被曝を避けるために」
仙台赤十字病院呼吸器内科 東北大学臨床教授 岡山 博
(2012年2月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会発行 http://medg.jp)


●セミナー・イベントのお知らせ

12年2月2日更新内容 全記事はこちら

薬剤師さん対象のインターネット番組に出演しました

 今週の月曜日(2月6日)の午後、主に薬剤師さんが視聴するインターネット配信番組に出演させていただき、がんの現状や患者の会、三次予防の必要性、緩和ケア等々・・・1時間にわたりお話いたしました。
 番組の制作は株式会社シニシア。番組の進行は、同社代表取締役でキャスターの田原一さん(薬剤師)の質問に答える形で進められました。番組出演のきっかけは、薬剤師関連のメーリングリストに、田原さんが投稿なさったことからです。
 「医療関連のコンサルティング及びITを活用した医療関連番組の配信、教育コンテンツの企画などを行っている者です。医療関係者向けの番組も作成しております。その番組の一つに私が進行役を務める『Tahara Initia TV』があり、薬剤師の方々をゲストにお招きする対談番組を始めることといたしましたので、ご案内致します」
 さっそく田原さんには、「メールを拝見いたしました。がん患者と家族のためのWebサイトを運営しております『週刊がん』の山本武道です。地域包括ケアに街の薬局・薬剤師さんが積極的に参画して、在宅医療や介護分野で活躍を期待している一人です。貴社の取り組み、番組についてなど詳細をお教えいただきたいのですが・・・」
 そして実現したのが、2月6日の番組です。田原さんと私との対談形式の内容は以下を参照ください。1時間に及ぶ番組みが視聴することができます。
 アーカイブリンク先URL:http://www.ustream.tv/recorded/20261127

 さて今週もまた、皆様にとって「もっといい日」でありますように・・・。

『週刊がん もっといい日』編集部 山本武道





☆☆☆「週刊がん もっといい日」VOL.287☆☆☆


治療最前線

膵がんの術前化学療法で手術の適応範囲を拡大し
出血量の少ない手術で治療成績向上をめざす――

東京医科大学病院(東京都新宿区)消化器外科講師 永川裕一医師

永川裕一医師

1969年金沢市生まれ94年東京医大卒業。消化器外科入局。東京医大八王子医療センター、同大病理学教室に二年間、米・ジョーンズホプキンス大学外科留学二年間、戸田中央総合病院を経て6年前より現職。

東京医科大学病院
東京都新宿区西新宿6-7-1
電話:03-3342-6111
http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/


 早期発見が難しく、また技術的にも高度なテクニックが求められる膵がんは、あらゆるがんの中でも最も治療が困難で、かつ予後も悪いがんとされる。その膵がんと闘うために消化器外科に進み、日々膵がんの「根治手術」をめざして治療にあたっているのが東京医科大学病院の永川裕一医師だ。父親から二代続いての「膵臓外科医」。術前に化学療法と放射線療法を組み合わせることで、他では手術不可能とされた膵がん患者を、手術が可能な状態に持ち込み、治療成績の向上を実現している。普段も気が付くと「どうすればもっと効果的な手術ができるのか――と考えている」という永川医師に、膵がん治療の現状と展望を取材した。

膵がん手術の成績向上のために
病理で学んだ知識を生かす――


 「たちの悪さ」では、すべてのがんの中でも突出した存在とされる膵がん。早期発見が難しく、見つかった時点で手術が可能なケースは全体の半分にも満たないのが実情だ。
 しかも、運よく手術ができたとしても、5年生存率は1−2割といったところ。医学の進歩でがんの治療成績が高まる中、膵がんについてはいまも苦しい戦いを強いられている。
 そんな中で、東京医科大学病院の膵がん5年生存率は3割程度をキープしている。数字で見れば僅かな差でも、膵がん治療に携わる者にとって、そして誰よりも患者とその家族にとって、この差の持つ意味は大きい。
 同院の膵がん治療の中心的立場にあるのが消化器外科講師の永川裕一医師。父親も膵臓外科だったこともあり、子供の頃から膵がん治療の難しさはよく知っていた。それだけに、「医者になるなら膵臓外科医」との思いを強く持ち、医学部卒業後も初志貫徹で肝胆膵担当の消化器外科に入局。外科的手術はもちろん、内科的アプローチにも精通し、あらゆる角度から効果的な膵がん治療を検討し、実践してきた。
 「膵がんの治療成績を劇的に向上させることは現状では難しいのは事実。でも、それを少しでも高めることはできるかもしれないし、それを目指さなければ、自分がこの道に進んだ意味がない」
 同院の5年生存率が全国平均より高いのは、そんな永川医師の「こだわり」にも似た膵がん治療に対する熱い思いが反映されてのものなのだ。
 実は永川医師、外科医デビューを果たしたのちに、2年間「病理学教室」に身を置いた経歴がある。病理とは患者から採取した組織を観察し、その発生や成長のメカニズムを検証し、診断やその後の治療に役立てていく仕事だ。一見外科とはかけ離れたセクションにも見えるが、永川医師は病理で学んだ経験の重要さをこう語る。
 「そもそも外科医として病理には興味があったのですが、実際に学んでみて、その重要性を痛感しました。がんがどのようなプロセスで進行していくのかを知る上でとても勉強になったし、その知識を持たずに根治手術はできません。また、膵がん手術は合併症の危険性が高いけれど、それを回避する上でも病理の知識が役に立ちます」
 その後、移植の研究で渡ったアメリカのジョーンズホプキンス大学も、膵がん治療では世界的に有名な病院。「医師としての分岐点」に立つたびに、「膵がん治療に役立つほう」を選んできた。夢の「膵がん征服」に向けて、確実に歩みを進めてきた。

無輸血手術も可能な高い安全性
術後管理までトータルでフォロー


 「膵がんから生還するには、根治手術が大前提」と語る永川医師。通常は膵臓の周囲を走行する重要血管への浸潤の程度で手術の可否が決まるのだが、永川医師は「ちょっと血管に接している程度なら術前の化学療法と放射線療法でがんを小さくして、手術に持ち込める可能性はある」と言う。事実、他院では「手術不可」とされた患者が、永川医師の下で化学療法を受け、実際に手術が行われるケースは珍しくない。
 「膵がんとわかった時点で患者にも、また医療者側にも“あきらめムード”が漂うものなのですが、それでは治療のスタートラインにさえ立つことができない。まずはスタートラインに立つことが重要であって、そのためには医療側が熱意を持って取り組むことが大事。その患者に合った抗がん剤と放射線の組み合わせ方を考えながら実践していくことで、効果は大きく変わってくるもの。医師の熱意とあきらめない姿勢が、このがんの生存率を高めてくれるのです」
 「手術可」となっても、その先にはまだ高いハードルがある。手術そのものの難度の高さだ。消化器がんの手術の中でも、食道がんと並んできわめてハイレベルの技術を必要とする膵がん手術は、根治手術が重要な鍵となる。とはいえ、根治性のみを優先すると、術後の生活の質が大幅に低下する危険性もある。加えて、膵液漏などの重大な合併症を回避するためには、安全性と積極性のバランス感覚が重要になるのだ。
 永川医師による膵がん手術にかかる時間は平均して6時間ほど。一般的なそれより1−2時間短い。しかし永川医師は言う。
 「単に『時間が短い』というだけではなく、根治性を考えた手術が必要。丁寧さと慎重さを忘れるといい手術はできません」と語る永川医師の手術は、根治手術となる率が高いにも関わらず、出血量は平均700cc。無輸血手術が可能な出血量の少なさは、まさに丁寧かつ慎重な手術の証だ。
 さらにもう一つ、永川医師がこだわるのが「術後のフォローアップ」。
 術後退院して安定したあとの外来は、極力永川医師自身が担当するという。
 「術後の栄養状態の把握はきわめて重要。特に消化酵素剤をきちんと飲んでもらうことが予後の生活の質を大きく変えることになる。このあたりのことは、膵臓を専門に診ている医師でないとあまり気にしないことでもあるので……」
 将来は膵がん手術にも腹腔鏡手術の導入を視野に入れており、すでに良性疾患の手術では腹腔鏡手術を取り入れている。また免疫治療との融合など、患者への侵襲の小さな膵がん手術を模索する永川医師。
 根治手術、低侵襲、術後のQOL向上――の三枚看板に高く掲げて、永川医師の挑戦はさらに続く。



クローズ・アップ

「高額療養費制度見直し」の議論を振り返って−
医療費負担に平等を求めてはいけないのでしょうか

東京大学医科学研究所 特任研究員・看護師 児玉有子

(2012年2月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会発行 http://medg.jp


 私は2009年以来、高額療養費制度見直しの研究に従事しています。また、昨年11月からは、大谷貴子委員(全国骨髄バンク推進連絡協議会 前会長)の代理として、社保審医療保険部会に出席する機会を頂戴しました。
 この会合に出席して感じたのは、いずれの委員も問題を深く理解してくださっていることでした。特に会議後の雑談の中で、樋口恵子委員(NPO法人高齢社会をよくする女性の会、理事長)から「ほんとにかかった病気で差が出るなんておかしなことだと思うのよ」と声をかけてくださったことは、とても心強く、ありがたく思いました。
 とりまとめられた意見書でも、「がんの患者など長期にわたって高額な医療をうける方が増えており、これらの方の負担を軽減し、医療保険のセーフティーネット機能の強化が求められている」と記されており、これは委員の総意だと思います。
 ただ、このような委員の意見は、高額な医療費負担で悩む患者・家族の元には届いていません。今回は、この問題をご紹介させて頂きます。

 2011年、高額療養費制度の問題は、社保審医療保険部会だけでなく、税と社会保障の一体改革や規制改革会議でも議論されました。2010年までの議論のポイントは、「平成24年度から自己負担限度額を超える場合には、負担上限額を支払うだけにする」という新たな仕組みを導入することでした。
 2010年12月に、この方針が発表されています。しかしながら、2011年、ここから一歩も議論は進みませんでした。それは財源について、コンセンサスが得られなかったからです。

 2011年、厚労省から提示された案は、「受診ごとに各人から100円徴収し、それを財源として、低所得者層とされる区分において最初の3ヶ月が80,100円から44,000円に、4ヶ月目以降は44,400円を35,000円に減額する。他の区分では、最初の3ヶ月が100〜18,100円、4ヶ月目以降は400円減額する。」というものでした。
 この案は、一見良さそうに見えますが、今回の議論の発端となった「がんの患者など長期にわたって高額な医療を受ける方」には何の助けにもなりません。なぜなら、このような患者で問題となるのは、最初の3ヶ月の負担ではなく、4ヶ月目以降の毎月44,000円余りを払い続けなければならないことだからです。

 最初の3回の負担が問題になるのは、大きな手術を受けた場合や突発的な怪我で手術した場合などが想定されます。しかしこのような場合には「高額療養費貸付制度」(支払額の8−9割の貸し付けを受けることができる制度)の利用や民間保険の利用により、一時期な高額医療費支払いによる経済的負担の緩和が可能です。
 民間保険会社でも、昨年から高額療養費制度の民間版とでもいう商品が売り出されました。しかし、すでにがんと診断されている人は使うことができません。

 がん患者が求めた長期負担問題は、ここまでは全く手つかずのままです。この問題の代わりに、世間の耳目を集めたのは、患者の窓口100円負担でした。あたかも高額療養費問題解決のための財源確保のような報じられ方でした。
 財政破綻寸前の我が国では、国民皆保険を守るため、給付と負担の議論は避けられません。患者の窓口負担はモラル・ハザードの問題、受診抑制の危険性と併せて、総合的に議論すべきです。財源の辻褄あわせに関する議論が先行したため、もっと大切な問題が放置されました。

 それは、「平等に医療を受ける権利」です。実は、長期に渡り高額な医療費負担が考えられる疾患には高額療養費制度の他に、様々な医療費補助制度があります。たとえば、「肝炎治療医療費助成」「難病医療費支援制度」、「高額療養費制度の特定疾患(血液透析など)」です。
 これらの医療費補助制度の適応を受けている疾患では、患者の医療費負担は「無料から毎月27,000円程度」となっています。どう見ても、これは不平等です。

 私は、慢性骨髄性白血病(CML)の患者さんから意見を聞く機会が多いのですが、特効薬であるグリベックの他に、肝炎治療でも使用されるインターフェロンの投与を受けている方もおられます。インターフェロンを使っているCMLの患者さんは、高額療養費制度を利用しながら、44,400円を払い続けています。
 同じインターフェロンを使う肝炎の患者さんの自己負担は、無料から毎月27,000円です。病名が違えば、自己負担が違います。CMLの患者さんから「肝炎だったらよかった」と言われた時、私は言葉を失いました。この問題を放置しておいていいのでしょうか。

 窓口で徴収する金額を100円にした根拠は、1300億円に収入が見込まれるからだそうです。ちなみに、一昨年、厚労省は「制度改善に必要な予算は2600億円」と発表していました。我々の試算(http://medg.jp/mt/2010/10/vol-321-2600.html)では、長期に高額な医療費を支払い続けている患者の負担改善に新たに必要となるのは550億円程度です。厚労省は情報開示を進め、もっと広く議論すべきです。

 高額療養費の問題については、民主党は2009年のマニフェストで見直しを明言しています。他の政党は2010年マニフェストで見直しについて記しています。確かに、民主党は医療を重視しており、政権交代以後、大病院の診療報酬を引き上げ、勤務医の労働環境は改善されつつあります。一方で、患者の経済負担は置き去りです。
 現在、国会では社会保障と税の一体改革に関しての審議が行われています。これからの審議でどのように議論されるのか、多くの患者、家族、国民は注目しています。
 
 最後に、本年4月から同一医療機関での同一月の窓口負担が高額療養費の自己負担限度額を超える場合は、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる取扱い(「現物給付化」)が導入されます。これは調剤薬局や訪問看護にも適応されます。
 この改正により、窓口での一時的は大きな支払いをしなくてもよくなります。このことはかなりの前進であることに違いありません。無事に省令を改正してくださり、また改正に伴い、様々な準備をしてくださる保険者の皆様に心から感謝申し上げます。





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